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2015.01.19

2015年度の施政報告 住宅と青少年に重点

2015年度の施政方針演説を終えメディアの撮影に応える梁振英・行政長官

2015年度の施政方針演説を終えメディアの撮影に応える梁振英・行政長官

 梁振英・行政長官は1月14日、就任後3回目となる2015年度施政報告(施政方針演説)を立法会で発表した。「法治を重んじ、チャンスをつかみ、正しい選択を」と題し、経済、住宅・交通、低所得層・高齢者・弱者支援、青少年育成、政治体制の発展などに関する政策を柱としている。特に住宅と青少年育成の問題に重点が置かれたほか、法治を強調するなど昨年の「セントラル占拠行動」を念頭に置いて作成された。だが香港独立を主張した学生会報に対する批判も盛り込まれたことが物議を醸している。

低所得層の手が届く住宅

 施政報告の民生分野では住宅、貧困、高齢化、青少年などの問題で新措置が盛り込まれた。最も注目される住宅問題では住宅購入支援の形をいかに多様化するかに言及し、賃貸型公共住宅と分譲型公共住宅の中間となる「廉価な分譲型公共住宅」や「官民混合開発」を提示。パイロットスキームとして建設中の賃貸型公共住宅を従来の分譲型公共住宅より廉価で販売する措置が打ち出された。

 対象は賃貸型公共住宅の住民と入居待ちの市民。住宅ローンの支払い負担は公共住宅入居待ち市民の収入の40%とすることも検討されており、2人世帯で月収1万4970ドルとして、住宅ローン支払いは月6000ドル。住宅価格は最も安くて150万ドルとなり、市価を50%余りも下回る計算だ。
そのほか今後10年の住宅供給目標を長遠房屋策略督導委員会が昨年12月に発表した48万戸に修正したほか、長期的な土地供給としてランタオ島開発などの推進を挙げた。

 青少年問題では3億ドルの「青年発展基金」を設立し、若者の起業を含めた支援を行う。初歩的な構想では、若者の起業に協力したノウハウを持つ非政府組織(NGO)を通じ若者が提出した事業計画を審査し、資金援助の価値があれば政府が無償で数万ドルを提供するとみられる。

 高齢化問題では下半期にリタイア後の生活保障に関する公開諮問を実施。リタイア後の生活保障改善のため500億ドルを確保した。政府が識者に委託した市民皆年金制度の構想も持ち上がっているものの、社会の共通認識が得られていないため、施政報告では触れていない。貧困問題では昨年の施政報告で打ち出した「低所得在職家庭手当」を推進するほか、「短期食物援助サービス」を17年末まで延長する。

 経済分野については、国家の高度成長と優遇政策、中国本土の他の都市と異なる制度の優位性を生かすことが強調された。第13次5カ年計画(16~20年)に呼応するため、特区政府はすでに中央政府に提案を出したことや、広東省政府と広東省自由貿易試験区について積極的に協議することに言及。試験区となる広州・南沙、深圳・前海、珠海・横琴の計画・開発で香港企業にとって最良の優遇政策と最大の発展の機会を得られるようにするという。香港企業が中国本土市場を開拓するため、ブランド確立、転身・高度化、内販促進を支援する10億ドルの基金を引き続き推進することも盛り込まれた。

独立主張の学生会報を批判

 今回の施政報告では「セントラル占拠行動」を受けて例年になく民主化問題に触れた部分が多く、学生会報に対する批判も盛り込まれた。

 施政報告の前文では「香港は法治社会であり、法を守りさえすればチャンスをつかみ、民主を推進し、経済を発展させ、民生を改善できる」と強調。「近年、雇用が安定していることから一部市民は経済発展の重要性を軽視している」として香港の投資・ビジネス環境を破壊する行為に警戒を示した。政治体制問題での基本法から逸脱した主張を戒め、1国2制度下の「高度な自治」は「絶対自治」ではないと言明。香港大学学生会が発行した会報『学苑』の14年2月号特集「香港民族、命運は自ら決める」や、13年に発行した書籍『香港民族論』が香港独立を主張していることを挙げ、「占拠行動の学生リーダーを含む学生の間違った主張を警戒しないわけにはいかない」と指摘、民主を追求するにあたり法を守らなければ無政府主義になると批判した。

 『学苑』編集長らは施政報告に同誌の批判が盛り込まれたことは言論弾圧と批判。書店では『香港民族論』の注文が相次ぐなど、今回の施政報告で最も注目を浴びた部分ともいえる。
また梁長官が施政報告を発表する際、民主派議員23人が傘を差して退場したほか、ヤジを飛ばす陳偉業、陳志全両議員が退場を命じられ会議は中断。公民党の梁家傑・議員らは記者会見で、施政報告には梁長官の辞任と政治体制改革5段階プロセスのやり直しが盛り込まれるべきと述べるなど、民主派は議会で非協力運動を続けている。

 香港大学民意研究計画が14日夜に640人を対象に行った世論調査では、施政報告に対する100点満点の評価は49.5点。14年の54.1点、13年の56.4点を下回り、梁長官就任後の施政報告で最も低い評価となった。施政報告に対し30%が「満足」、35%が「不満」と答えた。今回の施政報告には占拠収束後の効果的な対応が期待されていたが、社会の亀裂修復には程遠いようだ。

施政報告の主な内容

(1)経済
・第13次5カ年計画の提案を中央政府に提出
・広東省政府と広東省自由貿易試験区について協議
・アジア地域で経済貿易弁事処を増設
・中国本土市場を開拓するための基金推進
(2)住宅・土地・交通
・今後10年の住宅供給目標48万戸
・年間平均の公共住宅供給目標は賃貸型約2万戸、分譲型約9000戸
・民間の住宅開発による今後5年の年間平均供給量は約1万4600戸
・建設中の賃貸型公共住宅を従来の分譲型公共住宅より廉価で販売
・民間と共同開発で購入支援住宅の供給拡大
(3)低所得層・高齢者・弱者支援
・低所得在職家庭手当を推進
・短期食物援助サービスを2017年末まで延長
・リタイア後の生活保障に関する公開諮問、リタイア後の生活保障改善のため500億ドルを確保
・強制積立年金(MPF)を改善
(4)人材・労働
・投資移民計画を凍結
・公務員の定年退職時期を延長
・海外に移住した中国籍香港永住者の第2世代など域外からの人材導入を積極化
・最低賃金を1時間32.5ドルに引き上げ
(5)青少年育成
・15/16~17/18年度、公立小学校の学位教員の割合を50%から65%に拡大
・3億ドルの「青年発展基金」を設立
・中国本土との交流・実習の支援拡大
(6)環境保護、医療、文化
・リサイクル基金設立
・将来の電力市場に関する公開諮問
・中医薬検査センター設立準備
(7)政治体制の発展・地域行政
・行政長官普通選挙の第2回公開諮問を推進
(2015年1月23日『香港ポスト』)

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