中国が人民元の国際化を加速させる中、ヨーロッパ最大の銀行、HSBC(香港上海銀行)のダグラス・ジャーディン・フリント主席は5月24日にロンドンで開催された2013年の年次株主総会で、人民元は2015年に日本円に代わって米ドル、ユーロと並ぶ世界三大通貨の一つになり、5年以内には人民元の全面的な自由化が実現すると予測した。これについて香港のアナリストは、将来的に人民元が今の日本円の地位に着くことは疑う余地がないが、2015年の実現は困難だとの見方を示した。
世界の通貨取り引き量は、BIS(国際決済銀行)の2010年の調査で米ドルがトップ。200%の取り引き量で計算した場合(※通貨取り引きは2種類の通貨が関わるため)、米ドルが占める割合は全体の85%、ユーロは39%、日本円は19%、人民元はわずか0.9%となっている。
だが、フリント主席は、中国と貿易を行う国は増加しており、企業の貿易決済、投資、ローン業務など各方面においても人民元の使用は増加傾向にある。これら企業にとって人民元を扱うことは日常業務の一環となっている。中国マーケットに注目するすべての企業は人民元の潜在的なプラス面を考えるべきであり、オフショア市場、とりわけオフショア債券市場の発展は世界に人民元投資の機会を与えるだろうと述べた。
一方、中国社会科学院金融研究所の曹紅輝・金融市場研究室室長は人民元の自由化について慎重な見方を示した。曹室長は、当面人民元の取り引き量は貿易決算の増加とQDII(適格国内個人投資家)、QFII(適格海外機関投資家)の開放によって拡大されるだろうが、全体で言えば取り引き量は依然限定的なものであり、大切なのは金融の安定を維持することだとコメントした。
株主からも24日の年次総会で中国本土の金融リスクをHSBCは楽観視しているのではといった質問があったが、同行のスチュアート・ガリバー行政総裁は、本土の金融市場の主な問題は不良債権の規模の増大とシャドーバンキングの拡大にあるが、中国当局も十分な監視を行っており目下のところ重大なリスクは存在しないと回答。ただ、HSBCでも今後の事態を注視していきたいと付け加えた。5月25日付け『明報』が伝えた。