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2014.05.12

迫り来る利上げの危機 下落する住宅価格

 不動産市場では過熱抑制策が維持されているのに加え、3月に米国の利上げ見通しが示されたことを受け、住宅価格の下落傾向も顕著となってきた。抑制策で取引が低迷していた市場では、新規住宅物件が割安で発売され、中古物件ではオーナーが続々と価格引き下げに応じるなどで取引回復も見られるが、その分、相場は下落している。香港金融管理局(HKMA)は先ごろ、米国の金融緩和縮小に伴う金利正常化で住宅ローンの負担が3割増す可能性もあり、住宅価格の下落幅は予想を超えると警告。不動産市場の焦点はこれまでのバブル抑制から新たなリスクへと移っている。 
              
 国際通貨基金(IMF)は4月28日、特区政府に対し「米国の利上げ歩調による住宅相場の動きに留意すべき」と警鐘を鳴らした。住宅価格は2008年から約90%上昇しており、適切に処理しなければ大暴落を招くと指摘している。IMFは9日に発表した香港視察リポートで「段階的に抑制策を撤回するとともに、市況が急速に変化した場合は速やかに撤回しなければならない」と述べていたが、梁振英・行政長官は依然として抑制策を継続する姿勢を示していた。

 HKMAが3月末に発表した「通貨と金融の安定状況リポート」によると、世帯収入に占める住宅ローンの負担割合は昨年第4四半期で64.1%だが、仮に住宅ローン金利が3%引き上げられて比較的正常な状態に戻ったとすると負担割合は83%に達する。20年ローンの場合は返済負担が30.2%も増えることになり、大きな社会リスクになりかねない状況にある。市場ではおおむね今年の住宅価格の下落を見込んでいるが、HKMAは「状況は予想より早く進み、調整幅は予想を超える」と指摘している。

 特区政府地政総署は3月12日、新界の住宅開発用地競売が流札になったと発表した。放出されたのは大埔白石角の臨海高級住宅用地で、830戸の供給が可能。長江実業など7社が応札したが、最低希望額に達しなかったため政府は用地を回収することとなった。政府の公有地売却で流札となるのは10年9月以来、過去3年半で初めて。最高提示価格は29億ドル足らずのもようで、建築面積1平方フィート当たり4000ドル以下となる。これは09年の同エリアでの落札価格を45%も下回る。デベロッパーが不動産市場の先行きを悲観していることが示された。

 続く3月25日の新界2カ所の住宅用地放出が注目されたが、流札は免れた。このうち沙田の馬鞍山白石の用地は新鴻基地産発展が18億2600万ドルで落札。建築面積1平方フィート当たりでは4241ドルで、12年11月に長江実業が落札した近隣の用地が同5160ドルだったことから、約1年半で地価が17.8%下落したことになる。(記事提供:『香港ポスト』2014年5月9日号) >>>more

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