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2013.05.05

人民元国際化へ、金融市場の開放進む

 香港から中国本土の資本市場への人民元建て投資を認めるRQFII(人民元適格海外機関投資家)が規制緩和された。3月6日、中国証券監督管理委員会(証監会)はRQFIIの規制緩和を発表。試行機関を従来の中国本土のファンド運用会社と証券会社の香港子会社から、本土の銀行・保険会社の香港支店・子会社、さらに香港を登記地・主要事業地とする金融機関にも拡大した。これにより香港の金融機関のうち900社余りが申請可能となる。
 また、債券またはA株ETF(上場投資信託)に限られていた投資範囲は試行機関に決定権を委ね、80%以上は債券という制限も撤廃された。

RQFIIの推進とQDII2準備
 RQFIIは2011年末に始まり、目下のところ27社の試行機関が計700億元の投資枠を獲得。昨年11月の中国共産党大会で今後5年間に人民元の貿易・投資での使用拡大、個人の越境人民元業務の試行展開、人民元の越境循環ルートの整備といった越境利用拡大が示され大幅に進展。新たに2000億元の投資枠が設けられた。さらに中国人民銀が1月に行った会議では今年の重要課題としてRQFIIの推進と、本土の個人投資家による海外投資を認めるQDII(適格国内個人投資家)2の準備作業が盛り込まれた。
証監会の郭樹清・主席はQFII(適格海外機関投資家)とRQFIIを通じた資金がA株市場に占める割合を現在の1.5~1.6%から10倍に拡大したいとしている。昨年末までに認可されたQFIIとRQFIIの投資枠は合わせて約3756億ドルとなり、その10倍の3兆7560億ドルに上る資金が香港と本土の間に流れることになる。
 QDII2は07年に浮上して棚上げされた「香港株直通車」(本土住民に香港株の直接投資を解禁する計画)が再度検討されることだともいわれる。現在、適格投資者の認定方法、資金の受託方法など具体的内容が詰められている。

3年以内に世界三大通貨
 RQFIIの規制緩和は本土の金融市場のさらなる開放の表れだ。拡大する人民元の貿易決済なども国際化を加速させる要因となっており、香港上海銀行(HSBC)は人民元は3年以内に世界三大通貨の1つになると予測している。香港との協力で金融改革を試行する深セン市の前海深港サービス業合作区では、香港の金融機関による人民元の越境融資が始まった。4月1日からは本土に居住する香港・マカオ・台湾市民のA株取引が可能となり、A株市場が初めて域外の個人投資家に開放された。
 証監会と中国証券登記結算有限公司は3月9日、新たな証券口座管理規則を発表。本土で就業・居住する香港・マカオ・台湾市民は、4月1日からA株の取引口座を開設でき、合法的なA株投資が可能となった。本土の個人投資家と同様に投資額に制限はないが、域内で得た資金に限られるという。本土在住の香港市民は約8万人、マカオ市民は約2万人、台湾市民は約35万人いる。中国証券登記結算の統計では初日にA株取引口座を開設した香港・マカオ・台湾市民は上海と深圳で合わせて1044件だった。

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