1月15日、香港の梁振英・行政長官は今年の施政方針を発表した。目玉は新たに30億香港ドルを拠出するワーキングプア世帯の貧困対策とランタオ島東部の大規模開発計画。このほか住宅問題、高齢者補助などが盛り込まれた。
1月16日付け香港各紙によると、梁長官の今年の施政方針演説のスローガンは貧困層支援、青少年の繁栄、香港の潜在力の開花。特にワーキングプア世帯を対象にした生活支援策では、年間30億香港ドルを新たに拠出する。子供18万人を含む71万人、世帯数では20万以上が恩恵を受ける。原住民の子供たちの普通話(北京語)学習支援策や貧困家庭の子供たちの教育資金、奨学金なども充実させる。
住宅建設では、香港の深刻な住宅不足に対応するため新たな宅地開発に乗り出す。10年間で47万戸の住宅を建設し、うち6割りに補助金を支給する。また、薄扶林地区では公共住宅を増やすため建築の制限を緩和する。
このほか、宝くじ基金に100億ドルを投入し、高齢者向け住宅や社会復帰のための施設を開発・拡充する。さらに高齢者向け医療支援をこれまでの2倍、1人当たり年間2000ドルにする。お年寄りが2ドルで利用できる公共交通機関に緑色のミニバスを追加する。
2016年に香港・マカオ・広東省を結ぶ橋りょう「港珠澳大橋」の開通で3地域が結ばれることをにらみ、橋がかかるランタオ島東部を「イースト・ランタオ・メトロポリス」と称し、レジャーとビジネスの一大拠点にする。
まず監督を行う諮問委員会を設置。東部には新たに住民が居住できる住宅を建設するとともに、総面積130ヘクタールの人工島を建設し、出入境審査を行うイミグレーション、大型ホテル、ショッピングモール、レストランなどを展開する。橋がもたらすビジネスチャンスを全面的に活用するとともに、ランタオ島の一部を主要なビジネス拠点にして、セントラルと開発中の九龍東部をカバーする。
施政方針演説で梁長官は、本土との協力強化の重要性を繰り返し訴え、香港の経済、貿易オフィスのネットワークを本土でも拡大させ、さらにはアジア全体への拡充も検討していると強調。経済成長を達成し、その資金で雇用主らが住宅、貧困、環境、高齢化など香港の根深い問題に向き合う経済力をつけてくれることを期待すると述べた。
今回の梁長官の施政方針演説に政治改革は盛り込まれておらず、民主派は生活支援策で市民の支持を得ようとしていると批判。また、貧困対策に巨額の税金が拠出される一方、中産階級向け支援がとぼしかったことから、中産階級からは不満とともに増税を懸念する声が出ている。ランタオ島の大規模開発計画は、香港国際空港プロジェクトよりも規模が大きいため環境保護の活動家は強く反対している。