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2015.02.21

普通選挙案の否決を堅持 民主派離れ進む

新年恒例の民主派のデモ。セントラル占拠の影響で参加者は激減した

新年恒例の民主派のデモ。セントラル占拠の影響で参加者は激減した

 民主派団体の民間人権陣線が2月1日に行った新年恒例のデモ行進では、参加者数が大幅に減少した。立法会の民主派議員に対する評価も軒並み低下するなど、昨年の「セントラル占拠行動」の影響による民主派離れがうかがえる。だが民主派議員らは2017年の行政長官普通選挙案を立法会で否決する姿勢を堅持。政府は22年のさらなる改革の明示や民主派切り崩しなどで普通選挙に向けた政治体制改革案の可決にこぎ着けようとしている。

 新春デモの参加者数は当初5万人と予測されていたが、実際には主催者発表で1万3000人、警察の推計でピーク時に8800人、香港大学民意研究計画の調査で1万1000~1万2000人。昨年は主催者発表3万人、警察の推計1万1100人、香港大学調査1万4000~1万7000人だったのに比べ減少が顕著となった。主催者は新たな抗争方法を模索し、今年の7月1日のデモを引き続き行うかも含めて検討するという。

 香港大学民意研究計画の世論調査によると、民主派の立法会議員はセントラル占拠を機に評価が低下している。調査は1月に2回にわたり約2000人を対象に行われた。知名度の高い立法会議員10人を100点満点で評価したところ、トップ3は親政府派議員でいずれも昨年10月の調査に比べ評価が上昇。4位以下は民主派議員だが、梁家傑・公民党代表が42.4ポイント(同2.4ポイント低下)など、いずれも評価を下げた。同計画の鍾庭耀・総監は「昨年10月の調査でセントラル占拠に参加した議員はすべて評価を下げたが、今回の調査で民主派は引き続き勢力を失ったことが表れた」と解説した。

 セントラル占拠に反対していた「保普選反占中大連盟」は2月6日、普通選挙実現を呼びかけるキャンペーン「香港要普選」を開始した。5日間にわたりパンフレット配布やネットを通じて普通選挙実現に向けた市民の声を集め、世論によって民主派議員が普通選挙案の支持に回るよう圧力をかけるものだ。同連盟スポークスマンの周融氏は「大部分の市民は17年の普通選挙に賛成している。民主派が民意に従わずに普通選挙権を奪うならば、市民は15、16年の議員選挙で態度を示すはず」と述べた。

 だが民主派は依然として普通選挙案を否決する姿勢を崩していない。民主党の何俊仁・議員は1月9日、立法会で政治体制改革案を否決した後に議員を辞任し、補欠選挙を住民投票に代える計画を発表。何議員は中央に昨年8月31日の決定を覆すことと、政治体制改革の5段階プロセスやり直しを要求すると表明した。何議員は職能別選挙枠の区議会第2枠選出で、補欠選挙となれば香港全域が選挙区となるため公費の無駄遣いと批判されているほか、補選の後で5段階プロセスをやり直したら17年の選挙には間に合わないなど疑問を呈する声も多い。

 セントラル占拠に参加した民主派政党や学生団体は2月11日、住民投票の宣伝活動などについて討議した。まず協力計画を策定して覚書を交わし、民主党が4月に開く党大会で可決されれば計画は始動する。このため何議員の辞任は早くて5月。だが11月には区議会議員選挙があるため、政府関係者が民主党関係者に対し補選は来年3月に行うと示唆したという。来年9月には立法会議員選挙があることから、市民が補選に不満を持ち、立法会選での民主派の形勢は不利になるともみられる。

 中央人民政府駐香港特区連絡弁公室(中連弁)が2月4日に開催した新春パーティーには15人の民主派議員が招待され、うち5人が赴いた。民主派議員27人のうち警察から出頭要請を受けた議員や住民投票を計画している何氏は招待されなかった。昨年は立法会の全議員が招待され、急進民主派の議員も出席したのとは対照的だ。民主派は一部議員の招待を民主派切り崩しとみて警戒している。

市民の半数は政府案支持

 1月7日に発表された「行政長官普通選挙方法の諮問文書」では立候補のハードルを引き下げることが提案されるなど、政府は民主派の支持取り付けに躍起だ。従来は行政長官選挙への立候補には選挙委員会の8分の1(150人)の推薦が必要だったが、指名委員会の推薦ではこのハードルを維持するか12分の1(100人)にまで引き下げることを提案。最多で12人が立候補でき、推薦票に上限を設け単独候補者がすべての推薦票を集めるのを防ぐ。香港中文大学の蔡子強・高級講師による分析では、前回選挙では民主派候補が委員200人余りから推薦を得たため、12分の1となれば2人の立候補も可能という。

 また政府消息筋は、民主派が17年の普通選挙実現を支持するならば政府は改革案に「22年の行政長官選挙は状況に応じて改正が可能」と明記することを明らかにした。改正が可能な点として指名委員会の人数やグループ増設、候補者数などが挙げられる。

 香港基本法委員を務める香港大学法律学院の陳弘毅・教授は1月26日、民主派の背景を持っていても行政長官になる可能性がある者として3人を名指しした。陳教授は17年に行政長官の普通選挙が実現した場合、従来の親政府派以外に最終候補に残れる人物として、民主党副主席だった張炳良・運輸及房屋局局長、民権党主席だった陸恭恵・環境局副局長、民主派だった胡紅玉・行政会議メンバーの3人を挙げた。民主派に属していても現体制で比較的高い地位にある者は中央が愛国愛港と認めており、いずれも中央が受け入れられる行政長官の人選だと指摘した。

 公民党の湯家驊・議員は1月27日に香港電台(RTHK)の番組に出演した際、米英の外交官が接触して政府の改革案への支持を促したことを明らかにしたほか、「20年の立法会選挙で職能別選挙枠の廃止」を承諾するならば民主派を説得すると述べた。だが梁振英・行政長官は2月2日、「職能別選挙枠の廃止は現政権が承諾できることではない」として湯議員の提案を拒否。また同日に行われた工商会主催の政治体制改革フォーラムでは、職能別選挙枠と引き換えに民主派の支持を取り付けるのは割に合わないことや、政府が広範な諮問も行わずに政党とこうした取引をすべきでないとの意見が上がった。

 香港政改民意関注組は2月8日、行政長官の普通選挙に関する4回目の世論調査の結果を発表した(1月26日~2月1日、対象1004人)。「立法会での政治体制改革案の可決」に賛成は49.5%で、昨年9月の前回調査から3.8ポイント下落。反対は38.1%で同0.1ポイント下落。依然として可決支持が反対より多いものの、初めて50%を割り込んだ。ただし反対と答えた人の中でも「指名委員の選出で企業・団体票を個人票に代える」との修正が加えられれば賛成に回る者が52.1%、民主派支持者でも49.4%を占めた。果たして採決までに妥協し普通選挙が実現する可能性はあるだろうか。(2015年2月2日『香港ポスト』

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