12月9日、香港警察は高等裁判所の命令に基づき12月11日の朝9時から金鐘(アドミラルティー)の道路を塞いでいるバリケードとテントなどの撤去作業を行うと発表した。同時に銅鑼湾(コーズウェイベイ)の撤去も行われるもようで、事実上、警察のデモ隊に対する一斉排除となる。
最大占拠区の金鐘では先に行われた旺角(モンコック)以上に激しい衝突が予想されており、警察は7000人の警官隊を動員し、24時間以内にすべての占拠区を一掃する計画だ。2017年の普通選挙の導入方法をめぐる抗議行動「セントラル占拠(占領中環)」は、9月29日の発生から75日目に大きな節目を迎える。
特区政府と警察は占拠を続けるデモ隊に同日9時までに撤退するよう最後通告を行っており、旺角の強制排除以来、急進派や過激派が金鐘に移動していることから、デモ参加者に身の安全を守り、早めの自主退去を求めている。
これに対し、デモを主導する2つの学生グループの1つ、大学生で構成される「香港専上学生聯会(学聯)」は自ら撤退することはせず、今年7月のデモ同様、静かに抗議を行うとしている。
また、もう1つの学生グループ、中高生で構成される「学民思潮」のリーダーの黄之鋒・氏は政府との対話を求めるハンガーストライキをメンバーとともに行っていたが、絶食100時間目でドクターストップがかかり中断した。他のメンバーも救急車で運ばれるなどしたが、一部市民やメンバーが「ハンスト・マラソン」と称し絶食を引き継いでいる。
2カ月余りにわたり香港の3つのエリアの幹線道路を占拠したセントラル占拠は当初こそ勢いがあったが、長引くにつれ市民の支持は急速に減少した。セントラル占拠の発起人である大学教授など3人もここにきて学生に撤退を呼び掛けている。3人は12月3日に占拠行動の責任を取り警察に自首したが逮捕には至らず、すぐに警察署から出て来た。
学生グループは11月に北京で開催されたアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議に合わせ、李克強・首相との対話を求めて中国本土入りを試みたが、「回郷証(香港人の本土への入境証)」が無効となっており入境できなかった。中央政府はデモに関与した学生や市民、約500人のブラックリストを持っているといわれ、前後して多数の学生が本土への入境を拒否されている。デモ参加者は一時期に比べて明らかに減少し、デモ隊の内部分裂もささやかれ、学生グループは苦しい状況に追い込まれている。
金鐘の一斉排除は冠忠バスグループ傘下の跨境全日通が起こした訴えに対し、裁判所が道路占拠を禁じる臨時規制の命令を下したことによるものだが、12月20日のマカオ返還15周年までに香港の抗議行動を収束させたい中央政府の意向が働いたとも受け取れる。ただ、今回の占拠行動が収束しても、問題は残ったままとなり、今後も同様のデモが起こる可能性は極めて高い。すでにクリスマスにデモを呼び掛ける動きもあり、経済や市民生活へのさらなる影響が懸念されている。12月9日付け香港各紙が伝えた。