News & Event

2013.09.04

中国資産も売却、李嘉誠氏「香港撤退」信ぴょう性増す

 香港のスーパーマーケットチェーン大手「百佳超級市場(パークン・ショップ)」の売却先が注目される中、香港一の富豪、李嘉誠氏の「香港撤退」に信ぴょう性を与えるニュースが報じられた。8月29日、李会長率いる不動産開発最大手「長江実業」と傘下のコングロマリット「和記黄埔(ハチソン・ワンポア)」は、広東省広州市の複合商業施設「広州西城都薈広場」(※1)の株式をそれぞれ50%ずつ売却すると発表した。売却先はオフショアカンパニーの「GCRFF Acquisitions 22 Limited」、売却額の合計は26億人民元(約32億6800万香港ドル)。11月29日にすべての手続きを完了させる予定だ。
 長江実業は上海市浦東区陸家嘴で開発を進めているオフィスビル「東方匯経OFC」(※2)の売却も計画しているもようで、売却額は60億人民元(約48億香港ドル)以上、売却先候補に交通銀行とシンガポールの資産管理会社「ARA Asset Management Limited」の名前が挙っている。また、長江実業とハチソンは株式の大半を有する中国系企業「長園新材」の持ち株比率を大幅に減らしており、今年1月から8月までに同社株式の5%に当たる4317万5500株をブロック・トレード(取引市場の外で行われる大口の取引)で売却している。

勢い増す海外投資
 香港・中国本土の投資を縮小させる一方、李氏は海外投資を加速させており、今年上半期までに海外で計248億香港ドルを投じて4件の企業買収を行った(表1)。ハチソンの2013年上半期の企業年報によると、同社の六大基幹産業である港湾および関連サービス、不動産、小売り、インフラ建設、エネルギー、電信における欧州市場の収益が占める割合は全体の43%と最も多く、うち16%は英国となっている。次いでカナダ、香港がそれぞれ同15%、本土は同11%と最も少ない。
 李氏の海外投資は2000年から始まり、2008年の金融危機以降に急増。2010年には李氏の長男の李沢鉅(ヴィクター・リー)氏率いる長江グループ傘下の長江基建とやはり傘下の電脳実業、李嘉誠基金会が共同でフランス最大の電力会社EDFから英国の配電事業会社UKパワーネットワークを約58億ポンドで買収。以降、英国の上場水道会社ノーザン・ブリアンウオーター、発電プラントのシーバンク・パワー、NGN(ネクスト・ジェネレーション・ネットワーク)に続き、2012年には6億4500万ポンドで英国の天然ガス会社ウェールズ&スウェストユーティリティーズ(WWU)を買い取っている(2012年9月29日付け『新華網』)。その勢いは英国メディアから「(李氏が)イギリスを買い占める」と書き立てられたほど。かつて李氏は、英国は欧州連合(EU)の加盟国だが通貨はユーロではなくポンドで安定している。法律も秩序も非常に良く機動力もあるので、他のEU加盟国ほど先行きに不安はない、と語っていた。

〜※〜※〜※〜※〜
 李氏が事業の中心を香港から欧州に移す理由については諸説いわれているが、投資のプロ中のプロである李氏が香港・本土から資産を引き上げるのは中国バブルの崩壊を予測してのことではないかという声や政治問題がからんでいるとの指摘もある。また、広州西城都薈広場のテナント入居率が75%にとどまることや、香港の不動産抑制策と今年5月に発生した1000人近い港湾労働者の40日にもわたったストライキなどで、本土・香港ともに今後は大きな発展が期待できないと考えたのではないかと分析する専門家もいる。ストライキは最終的に9.8%の賃上げで労組が合意している。9月2日付け『星島日報』、3日付け『『鳳凰網(ifeng.com)』などが伝えた。

表1)2013年長江グループの資産売却と投資

時期 国/地域 売却 買収 価格
2013/01 ニュージーランド Enviro Waste 廃品管理会社 32
2013/03 香港 Asia Container Terminals 港湾業務 39
2013/06 オランダ AVR-Afvalverwerking B.V リサイクルエネルギー 97.7
2013/06 アイルランド O2業務 80
2013/07 香港 パークン 推定312
2013/08 上海 東方匯経OFC 推定37
2013/08 広州 西城都薈広場 推定48
2013/08 上海市場 長園新材株

※単位:億香港ドル 資料:『21世紀網』
 
※1)広州西城都薈広場は敷地約7万1000平方メートル、4階建て建物の総建築面積は8万8000平方メートル。広州地下鉄1号線と6号線の乗り継ぎ駅となる黄沙駅に併設しており、ワンポアが建設した上階のマンション「逸翠湾」は2011年末に完売している。
※2)上海の東方匯経OFCは敷地面積は9298平方メートル、建物の総床面積は約8万平方メートル。周辺に「金茂大廈」や「環球金融中心」といった浦東区を代表するオフィスビルが立ち並ぶビジネスの中心部に位置する。

このエントリーをはてなブックマークに追加
LINEで送る