バックパッカーの聖地の1つとして知られる香港・チムサーチョイの重慶大厦(チョンキンマンション)の客が激減している。先きごろ、香港でエボラ出血熱に感染した疑いのあるアフリカ籍の宿泊客が発見されたためで、検査の結果陰性だったものの、ビルの店舗は閑散とし、ゲストハウスからは客が引き上げる動きが出ている。
重慶大厦には小さな店舗やゲストハウスが多数入居しており、さまざまな国籍の旅行者が宿泊している。ビル内には無国籍な雰囲気が漂い、安価な宿泊費も手伝って多くのバックパッカーを引きつけてきた。だが、西アフリカを中心に猛威を振るっているエボラ出血熱の流行の拡大に世界中が戦々恐々とする中、ビルは今人影もまばらだ。
重慶大厦でネパールホテルを経営する男性は、これまではネパールはもちろんパキスタンやインド人の長期滞在者に加え、広東省に出掛けるアフリカ系ビジネスマンの短期滞在者が多かったが、今は宿泊客は皆早く引き上げたがっており、売り上げは30%落ち込んだという。この経営者は、チェックイン時にパスポートを提示してもらい、西アフリカからの旅客は宿泊を拒否するつもりだと語っている。
ビル内の人の流れは通常の3割りほどしかなく、飲食店や雑貨店でも売り上げが落ち込みんでおり、スーツケース店のオーナーは、これまではアフリカ系ビジネスマンが、購入した中古の携帯電話を入れるためにスーツケースを買って行ってくれた。1日20〜30個は売れていたが、今は1日に1〜2個だと嘆いた。
香港では今回のケース以前にもトランジットの旅客にエボラ出血熱の疑いがもたれたが、陰性だった。香港とアフリカの人的交流は多くはないが、隣接する広東省広州市にはアフリカ系住民がおよそ10万人いるといわれる。仮に広州市で感染者が確認された場合、香港にウィルスが持ち込まれるリスクは大きくなる。エボラ出血熱は有効な治療薬がまだなく、感染すると90%の確率で死に至るとされている。過去に感染症の爆発的な流行を幾度か経験した香港では、引き続き警戒を強化する構えだ。8月13日付け『星島日報』が伝えた。