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2014.07.07

電力問題で議論 中国本土からの供給に反発も

 将来の香港の発電燃料の構成に関する公開諮問が6月18日に終了した。諮問文書では9年後の燃料構成について天然ガスによる発電を拡大するか、一定の割合の電力を中国本土から供給するかの2種類の案を提示した。電力会社は本土からの買電には安定供給の問題があるとして、天然ガス拡大案を強力に推しているが、特区政府には2社の財閥系電力会社によって支配されている香港の電力市場を開放する狙いがある。 

 特区政府環境局が今後の発電燃料の構成に関する公開諮問を開始したのは3月19日。香港の発電燃料の構成割合は2012年現在で石炭53%、深圳市の大亜湾原発からの輸入23%、天然ガス22%、その他2%となっている。二酸化炭素の排出削減に向けて石炭火力発電所は17年から徐々に閉鎖するため、将来的な燃料構成について検討する必要がある。諮問文書では23年以降の燃料構成について①中国本土の南方電網からの買電30%、大亜湾原発20%、天然ガス40%、石炭など10%②天然ガス60%、大亜湾原発20%、石炭など20%――の2案を提示。いずれの案でも発電コストは08~12年に比べ倍増するという。この2案については識者から①は本土からの電力供給が50%を占めるため、送電網の損傷で安定供給が脅かされる可能性があり、②は価格が上昇している天然ガスに過度に依存する問題が指摘されている。

 特区政府環境局は3カ月で7万通を超える意見書が寄せられたと発表。同局が行った公開諮問での意見書はゴミ処理費徴収で3500通、飲料ボトルの回収費徴収ではわずか600通だったのに比べると今回は多くの意見書が集まった。

 立法会経済発展事務委員会で5月26日に行われた討議では、南方電網から購入する案については多くの議員から電力供給の安定性への影響に関して質問が出た。特区政府環境局の黄錦星・局長は「最終的に本土からの買電が必要となった場合は供電の安定性について香港の電力2社と同じレベルを要求する」と強調したほか、マカオは90%の電力が南方電網から供給されているが、安定性は99.9999%で香港より高いと指摘。さらに政府は本土からの買電が香港の電力市場開放の第一歩になるとみていると説明した。

 香港に2社ある電力会社の1つである中華電力は5月21日、環境局に意見書を提出し天然ガスの利用を拡大する②案への支持を示した。中華電力は①について本土の電力供給の安定性は香港に及ばないと指摘。南方電網の昨年のユーザー1戸当たり平均停電時間は138分であるのに対し中華電力は2.3分とのデータを挙げ、本土からの電力供給への依存が高まれば停電リスクが高まり、国際都市としての香港の地位に影響するとの懸念を示した。

 もう1つの電力会社である香港電灯の尹志田・最高経営責任者(CEO)も5月29日、本土からの電力購入に反対の立場を示した。先に環境局の黄局長は本土からの電力購入が「香港の電力市場開放の一歩になる」と述べたことに対し、尹CEOは電力市場を開放しているオーストラリアでは電気料金は08年に比べ約60%上昇したことなどを挙げ、「市場を開放しても電気料金が下がるとは限らない」と指摘。また近年発生した大規模な停電を例に、送電網を開放すれば電力供給の安定性に影響すると述べた。また、尹CEOはシェールガス開発や南シナ海のガス田開発によって天然ガスの発電コスト伸び率は低く抑えられると指摘した。

 こうした折、香港電灯の系列である和記黄埔(ハチソンワンポア)が諮問文書の意見書に記入するよう求めるメールを社員に送っていたことが明らかになった。メールには①について信頼性などの問題を指摘した図解を添付しており、香港電灯に有利な案を支持させるよう誘導している嫌いがある。(記事提供:『香港ポスト』2014年7月4日号)more>>>

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