香港で粉ミルクの域外への持ち出しが制限されて4カ月以上が過ぎた。食物及環境衛生局の高永文・局長は7月12日、委員会の手引きと基準に従って10月に検討を行い、ストレス・テストでサプライチェーンに問題がなければ粉ミルクの持ち出し制限条例を解除すると発表した。香港特区政府にとってこの条例は、並行輸入業者の買い占め抑え込みと品不足でピークに達していた市民の不満を解消する狙いがあった。
香港では昨年、粉ミルク不足が深刻化した。中国本土産の粉ミルクから有害物質のメラミンが検出された事件以降、香港で粉ミルクを買い求める本土中国人が急増。これを商機とみた並行輸入業者らがあの手この手で粉ミルクを大量に買い占め、手荷物扱いで本土に運んで販売するため、品不足や価格の高騰を招き、香港人が子供に飲ませるミルクを購入できない事態が発生した。
このため特区政府は今年3月、粉ミルクの持ち出し可能年齢を16歳以上とし、1人当たりの個数を1.8キロ(約2缶)までに制限する措置を取った。これにより香港の粉ミルク不足は解消したが、今度は本土中国人から不満の声が上がった。香港の販売業者からも売り上げが激減したと嘆かれた。条例が不明瞭なため行政が混乱し、本土観光客が持ち帰ろうとした米粉を粉ミルクと間違え拘留するといったケースも少なくとも十数件起きた。さらに条例施行時、中央政府のオフィシャルメディア『環球時報』が論文を掲載し、香港の政策は世界でも稀なほど厳しく、本土住民の心を傷つけるものだ、といった批判を展開したことも特区政府にとっては気掛かりな事となった。
並行輸入業者らは粉ミルクのみならず、あらゆる日用品を大量に購入し本土で売りさばくため、香港ではインフレがさらに悪化。本土投資家の不動産購入で市場価格が高騰、香港人のマイホームの夢はさらに遠のき、「ゼロ割り当て制度」を設ける以前は本土妊婦が大量に押し寄せ産院のベッドを埋め尽くし、香港人妊婦が出産予約を取れない事態が発生していた。香港人は本土中国人を「大群でやって来てなんでも食べ尽くす『イナゴ』」と呼び、中港のあつれきは一層深刻化。政治問題にまで進展しており、解決は難しいようだ。7月15日付け『星島日報』『香港経済日報』が伝えた。