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2015.06.15

天安門事件追悼集会 過去7年で最低規模

 香港市民支援愛国民主運動連合会(支連会)は6月4日、天安門事件による犠牲者を追悼する6・4キャンドル集会をビクトリア公園で行った。26周年を迎えた今年の参加者数は主催者発表で13万5000人、警察の推計ではピーク時に4万6600人。ともに2009年以降で最低となった。支連会の「民主的な中国を建設する」との理念に反発して学生団体の香港専上学生連会(学連)が初めて欠席したほか、香港大学学生会や過激派(排他的民主派)団体が独自に集会を行うなどで追悼活動は分散化した。

 4日午後はビクトリア公園周辺で過激派団体の熱血公民や香港本土力量、親政府派団体の愛港之声や保衛香港運動などが活動を行い、衝突を警戒し公園周辺に少なくとも500人、各地の追悼活動のため全体で1000人以上の警官が配備された。愛港之声などはビラを配って天安門事件の真相を市民に訴えたほか、保衛香港運動は殉職兵士の追悼集会を実施。熱血公民は香港全域をバスで巡回した後、尖沙咀で集会を開催した(約800人が参加)。また香港大学は午後7時半から校内の中山広場で追悼集会を行い、主催者発表で2000人が参加。「香港独立」主張で問題となった学生会報『学苑』元編集長らをゲストに招いた。

 支連会が集会に先駆けた5月31日に行った天安門事件追悼デモ行進の参加者数は主催者発表で昨年と同じ3000人だが、警察の推計ではピーク時に920人で、昨年の1900人から大幅に減少。デモ行進でも学生団体の参加が減少し、デモ隊の中には英国植民地旗や黄色い傘を掲げる者もいた。出発地点では親政府派団体「和平論壇」が国旗を掲げて「支連会は天安門事件の真相を歪曲している」と抗議したほか、行進中には香港本土力量からの攻撃を受けた。

 香港大学民意研究計画の世論調査では支連会に対する支持度が過去最低になったことも分かった。調査は5月22~28日、1089人を対象に行われた。支連会に対する支持度は昨年の50.1ポイントから44.6ポイントに低下し1992年の調査開始以降で最低。「支連会は解散すべき」との答えは昨年の17.8%から25.6%に急上昇し93年以降で最高。「天安門事件の再評価を支持する」は昨年の56.1%から52.5%に低下し2008年のレベルに戻った。

 こうした状況を受け支連会が学生らに迎合する姿勢もみられ、集会では学生らが香港基本法を燃やしたパフォーマンスが物議を醸した。同集会では香港中文大学、城市大学、理工大学、樹仁大学の学生代表が「香港人による憲法改正」や「自主」などのスローガンを掲げ、壇上で基本法の冊子を破って燃やした。中文大学生会の王澄烽・会長は「基本法起草委員会は後半で民主派が参加しなかったため代表性を欠く」などと説明した。この行為に対し梁振英・行政長官は5日、「特区政府の政治体制改革案に異論があっても基本法を順守しなくてはいけない」と強調。立法会の曽鈺成・議長も「基本法は香港の資本主義の維持を保障したもの」として、学生の行為は1国2制度の否定を意味し「中国の他の都市と同じ制度にしたいのか」と疑問を呈した。支連会の張文光・常務委員は7日の商業電台の番組で、学生の行為は事前に通知されていたと明かし「個人的には同意できない」と述べている。

中央、民主派と強硬派を区別

 支連会のデモ行進が行われた5月31日、深セン市では中央高官と民主派を含む立法会議員の会談が行われた。同様の会談は昨年4、8月に続き3回目。参加した議員は54人で、うち民主派は14人。民主党の劉慧卿・主席、何俊仁氏、公民党の毛孟静氏、工党の李卓人・主席、無所属の黄毓民氏や人民力量、新民主同盟の議員ら中核的人物や急進派は参加しなかった。

 中央側は全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会の李飛・副秘書長(香港基本法委員会主任)、国務院香港マカオ弁公室の王光亜・主任、中央人民政府駐香港特区連絡弁公室(中連弁)の張暁明・主任。会談は約4時間で、後半の約2時間は民主派と中央高官の単独会談が行われた。普通選挙を実現する最後のチャンスとみられていたものの、李主任は全人代常務委の決定が「実施されないうちは変更する可能性はない」と指摘し、同決定が2017年に限らず以降も適用されると明言。一方、公民党の梁家傑・代表は中央が決定を変更しないことから政治体制改革案の否決を堅持すると表明し、会談は物別れに終わった。

 特区政府は6月2日、行政長官選出方法の改正に関する議案を17日に提出すると立法会に予告した。議案の内容は4月22日に発表した「普通選挙に関する公開諮問報告書と改革案」に記載したものと同じで、採決は18日か19日となる見込み。民間人権陣線、学連、学民思潮など10団体余りは14日から採決当日まで立法会議事堂前で集会を行うと発表。5万人の参加を見込んでいる。一方、親政府派も17日から支持者を立法会周辺に動員するほか、セントラル占拠反対団体の「保普選反暴力大連盟」も可決を支持する集会を行うため、立法会周辺では可決支持派と反対派の衝突も懸念されている。続く7・1デモや再び占拠行動が発生する可能性に備え、警察は7000~8000人を待機させているという。

 香港マカオ弁公室の王主任は立法会議員との会談後の記者会見で、民主派を2種類に分けて説明。大部分の「香港に対する国家の主権回復に賛成する者」とはさらに意思疎通を図ることを期待するが、ごく少数の「香港を独立した政治実体とみなして中央の統治に敵対し、外部勢力と結託して香港独立や共産党政権の転覆を図る者」は「強硬派」として行政長官選挙から排除し、当選しても任命しないと断言した。全国香港マカオ研究会の劉兆佳・副会長は6・4集会の様子を見て「伝統的な民主派政党・団体は過激派の支持を取り付けようとするため、ますます過激になる。過激派と一線を画さない限り位置づけはさらに不明確になる」と指摘した。民主派は中央との敵対路線か対話路線かの選択を迫られている。

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