香港特区政府は今後、香港を訪れる旅客数が激増する可能性があると予測した。昨年香港を訪れた観光客は過去最高の延べ5430万人(前年比11.7%増)だったが、2017年には年間7000万人、2023年には少なく見積もっても1億人に達する見込みだとしている。主に中国本土からの観光客の増加が予想されるが、特区政府は受け入れは可能であり旅客数の制限は行うべきではないとの見解を示した。
人口超える観光客
この数字は1月17日に特区政府が公表した「旅客受け入れ能力の評価リポート」によるもの。現在でもすでにチムサーチョイやコーズウエイベイなどの繁華街では本土観光客が増え過ぎて混雑しており、香港の人口を超える観光客数の受け入れは市民生活にさらなる支障が出ると不安の声が上がっている。また、7000万人の観光客を受け入れるにはホテルの客室数が足りないとの指摘もある。
だが、香港商業発展局の蘇錦樑・局長は、香港では23万人が観光業に従事しており、香港経済の重要な支柱になっていることや、香港が自由経済を標榜する上でも制限すべきではないとしている。
特区政府は観光客の受け入れ能力を高め、一部の地域に旅客が集中しないよう配慮するとともに、購買力の高い旅客を誘致することを目標としており、2017年までに客室を1万6000室増やし、8万4000室にする計画だという。
CEPAで自由旅行解禁
香港の本土観光客増加の背景は2003年にさかのぼる。同年、猛威を振るったSARS (重症急性呼吸器症候群)により傾きかけた香港の観光業を救済するため、中央政府はCEPA(中国本土と香港の緊密な経済連携協定)に、本土の一部都市住民の自由旅行の解禁を盛り込んだ。以降、対象となる都市は年々増え、現在では本土の49都市の住民が簡単なビザ発給手続きにより個人旅行で1週間の香港滞在が許されている。
2012年にはさらに緩和が進み、一定の条件を満たした深圳戸籍を有する深圳住民は1回の滞在期間が7日間を超えなければ1年に何度でも香港への自由旅行ができるようになった。また、広東戸籍を持たない深圳住民でも深圳市で手続きを行えば香港の自由旅行が可能となったが、これらの緩和策が並行輸入業者による粉ミルクなどの買い占めにつながり、結果としてインフレを招き、本土と香港のあつれきを深めたといわれている。1月19日付け『星島日報』『香港経済日報』などが伝えた。