香港では増え続ける中国本土からの自由旅行者に不満を持つ市民団体の抗議行動が激化している。2003年のSARS (重症急性呼吸器症候群)で落ち込んだ香港経済の救済策として、中国政府は同年以降段階的に香港への自由旅行を解禁したが、10年が過ぎさまざまな問題が噴出。香港市民の間では本土客を「大群でやって来てなんでも食い尽す『イナゴ』」と呼び、排斥する動きが強くなっている。
一方、香港特区政府はさらなる観光客の増加を目指しており、今後3年間に7000万人を受け入れる計画だ。物理的にも精神的にも香港のキャパシティーが試されている。
英国旗手に罵声
2月16日、インターネット上で発起した「反赤化」と名乗る約20人の団体がチムサーチョイで増加する本土観光客に抗議した。団体はこの行動を「イナゴ駆逐(くちく)行動」と名付け、観光客の多いフェリーピアから広東ロードにかけてイギリス国旗を手に本土観光客に罵声を浴びせながら行進した。途中、本土観光客を支持する団体「愛港之声」と衝突し、双方「売国奴」「支那人」などとののしり合い警察が仲介に入る場面があった。
粉ミルクはないか?
さらに1週間後の2月23日、今度は旺角で「愛とハンドキャリーが旺角を占拠する」と名付けた類似の抗議行動が行われた。この団体もネット上で発起されたもので、十数人の団体がMTR旺角駅を起点に繁華街をハンドキャリーを引きながら行進。途中、ドラッグストアなどに入り北京語で「粉ミルクはないか?」などと本土客をやゆする言動を行った。
団体は「1億人に1億個のハンドキャリー 旺角の歩行者のストレステスト」と題したFacebookで同日の行動を「香港光復の大切な一歩」と記している。団体は類似の行動を今後も計画しており、3月1日には沙田で行われるもようだ。
このような抗議行動に対し、ネット上では香港と本土のネットユーザーの間で激しい論争が巻き起こっている。このうち本土の人気サイト「騰迅(Tencent)」には、「本土中国人は香港の繁栄の『恩人』だという意識を持っている」といった文章が掲載された。
抗議デモが行われた際にも本土観光客から「われわれが来て消費しなければ、香港は今のように良くなっていない」といった意見が出ているが、香港人はこれを「(本土客の)勝手な思い込み」と捉える傾向があり、深圳戸籍者へのマルチビザ発給を停止するよう特区政府に求める声が強くなっている。
香港特区政府の梁振英・行政長官はデモ隊の行為を強く批難。政府高官や有識者からも失望の声が出ており、観光都市香港のイメージを損なうと懸念されている。2月16〜24日付け香港各紙が伝えた。