世界が注目する中国本土のeコマース(電子商取引)最大手、阿里巴巴(アリババ)グループの香港でのIPO(新規上場)の可能性はほぼ消え、上場時期は来年に持ち越される公算が高くなった。場所は米国に加え新たに中国本土の上海証券取引所が浮上した。米経済誌『ウォール・ストリート・ジャーナル』傘下の経済ニュースサイト『マーケット・ウォッチ』が情報筋の話として伝えたもので、アリババ側はコメントを控えている。
国際世論は香港支持
香港上場に関しては9月25日、アリババ・グループが香港証券取引所(香港交易所/HKEx)との交渉を打ち切ったと発表。グループが要求するパートナー制度による特殊株式が香港の上場規則に沿わず、水面下で行われていた交渉が決裂したとみられている。
香港証券取引所の昨年の平均取り引き量は2007年のピーク時と比較して39%減少している。今回、資金調達予想額1000億香港ドル規模のIPOを逃したことで、今年のIPOの資金調達総額で香港が世界5位以内に留まるのは難しくなった。
だが、国際世論は好意的な見方を示しており、英国紙『フィナンシャル・タイムズ』は「アリババ:ゴマは開かなかった」と題し、香港がアリババの覇権を認めなかったことは賢明であり喜ぶべき、といった論評を掲載。また米紙『ニューヨーク・タイムズ』は、米国がアリババに門戸を開くならアメリカの規制基準はさらに低くなるだろう、とアリババのパートナー制度に批判的な論調を展開した。
米国上場なら中央が難色
香港がリングから下り、米国ではニューヨーク証券取引所とナスダックがアリババのIPO争奪戦を繰り広げているとの報道があるが、中国本土のビッグデータを持つアリババが米国での上場準備を進めれば、中央政府が難色を示す可能性は高い。
現在、アリババ・グループ傘下のネット通販サイト「淘宝網(タオバオ)」には5億人、ネット決済サービス「支付宝(アリペイ)」には8億人、間接的に株を有する中国版ツイッター「新浪微博(シナウェイボー)」には5億4000万人のユーザーがおり、グループは本土のネット市場をほぼ掌握している。アリババの米国上場はいわばFacebookやGoogleが中国本土で上場するようなものであり、同グループの海外上場はあり得ないとの見方もある。
また、「訴訟の国」といわれる米国で上場した中国系企業の多くが頭の痛い裁判を抱えており、このこともアリババが当初、米国より香港上場に積極的だった理由の1つとされている。現在、アリババ・グループの馬雲(ジャック・マー)会長が香港側との修復を目指し自ら協議を続けているとの報道もあり、香港上場の可能性もまだ残されているようだ。9月27日~10月6日付け『星島日報』、香港電台(RTHK)、『鳳凰網(ifeng.com)』などが伝えた。