構想が持ち上がりながらも長らく頓挫(とんざ)していた中国本土の投資家の香港市場での株取り引き、通称「直通車」が、香港と上海の双方向の証券市場の開放「滬港通(上海香港直通車)」というかたちで、早ければ10月にも施行される見通しとなった。
5500億元の資金流入
上海香港直通車については4月2日、本土メディアが構想について協議がまとまったと報じていた。その後、4月10日の朝に李克強・首相が海南島で開催されたボアオ・アジア・フォーラム(博鰲亜洲論壇)でゴーサインを出し、同日正午に中国証券監督管理委員会(CSRC)と香港証券先物事務監察委員会(SFC)が共同声明を発表した。
内容は中国本土籍の投資家に香港のH株市場を開放するという2007年の構想から一歩進み、香港籍の投資家は上海証券取引所に、本土籍で上海証券取引所に口座を持つ投資家は香港の証券市場に直接投資できる双方向の開放策となり、両地の投資家から驚きと熱い期待を以て迎えられた。
投資の総限度額5500億元。うち、香港側は上海の投資家の限度額を2500億元、1日の投資の上限を105億元に設定。本土投資家なら誰でも投資できるわけではなく、機関投資家か上海の証券口座に50万元以上の残高を持つ個人投資家に限られる。また、売買できるのは香港証券取引所(HKEx)のハンセン総合大型指数もしくはハンセン総合中型指数の構成銘柄か、上海と香港の証券取引所に同時上場しているA+H株のH株、計266銘柄となる。
上海側は香港人投資家に制限を設けておらず、限度額は3000億元、1日の投資の上限は130億元としている。香港人投資家は上海証券取引所の「上証180指数」「上証380指数」の構成銘柄もしくはA+H株のA株、計560銘柄の売買を行うことができる。
上海香港直通車が実施すれば巨額の資金が上海と香港の双方向に流れ込む。このニュースが報じられた10日午前10時45分、敏感な銘柄である湊港所香港交易所(香港証券取引所)の取り引きは停止され、翌日再開した。10日の香港のハンセン指数は343ポイント(1.5%)上昇し、取引額は1069億香港ドルまで急増した。上海証券取引所でも1.4%上昇し、終り値は2134ポイントとなった。
香港の市場関係者は、直接恩恵を受ける銘柄として香港交易所を挙げている。また、アナリストはA株市場に現在欠けているカジノ株や騰迅(Tencent)のような大規模なIT株は本土投資家の人気を得ると分析している。4月11日付け香港各紙が伝えた。